訴訟を避けるため、思わぬ出費をするハメに当然ながら、彼女は社内の同僚に、この解雇情報を触れまわりました。
「私、解雇されるのよ。
たしかあなたの名前も、解雇者のリストに挙がっていたんじゃないかしら。
それも、日本から来る社員が私たちの職を奪うからなのよ。
なんて理不尽なの。
ただでは辞めてやるもんですか。
退職金をたんまりもらうつもりよ。
Eさんは、ちゃんと出すっていいましたからね」もう、職場はパニック状態です。
「私は解雇の対象者なのか」と、現地社員がどっと人事部門に押し寄せてきます。
「退職金が×力月分支払われるつて、確かなんですね」などと、話に尾ひれもつきます。
こうなったら、もう手の施しようがありません。
私たちは、15人に円満退社してもらうために、いろんな手立てを考えていましたが、そのすべてが無効になってしまいました。
さらに悪いことに、E社ではきちんとした人事評価が行われていなかったため、その人事記録の内容は裁判に堪えられるものではありません。
もし集団訴訟を起こされたら、勝つ見込みはない弁護士も私たちもそう判断しました。
集団訴訟は必ず新聞沙汰になり、会社のブランドやイメージを大きく損ねることになります。
また、アメリカでは懲罰的な賠償が認められているため、敗訴すれば莫大な出費を覚悟しなくてはなりません。
そんな事態を避けるには、結局、おカネで解決するしかないわけです。
15人にはそれぞれ相当額の退職金が支払われ、E社にとっても私たちにとっても、この事案はきわめてあと味の悪いエンディングになったのでした。
情報管理マニュアルをつくる前であっても、解雇などの守秘情報を知る駐在員への講習会をできるかぎり早く開き、守秘の意識だけでも高めておくべきだった……。
この事例を機に、私たちが守秘義務の周知徹底を最優先したのはいうまでもありません。
以上、雇用契約書と給与設定、退職と解雇時の問題について代表的な事例と主な対策をご紹介しました。
もう少し広い範囲で、日本人とアメリカ人の意識の落差、およびそのことに起因する人事上・ビジネス上のさまざまな問題点を述べるとともに、そのことを通じて、「人事コンサルタントの上手な活用法」に触れてみたいと思います。
コンサルタントを活用して人事トラブルを未然に防ぐ日系企業に対する訴訟はこうして起きる信頼が得られる人事コンサルタントの条件は人事コンサルタントといえば、人事制度を大改革する際に高度な専門的ノウハウを携えて乗り込んでくる頭脳集団、というイメージをお持ちではないでしょうか。
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